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大阪→横浜 廻航

平成26年5月30日(金曜)~6月5日(木曜)

5月30日 14:50 大阪田尻港 出港         31日天気図

 ラダーヘッド周辺に発生したヘアークラックの補修が終わり、前回と同様に陸送ではなく再び自らで廻航をすることにした。前回は、台風の合間を縫ったきつい航海だったが、梅雨前の安定した天候の下、順調な航海を期待した。が、しかし、前回に比べ身に危険を感じた様なことも無く、また、体力的にも楽だったものの凪による昼間の高温と夜露への忍耐を強いられ、そして如何に風の頃合いを見て効率的にエンジンを使用するかということに神経を使った廻航だった。

 田尻港 出航後、友が島が近づくに従い南西からの海陸風がブローで10m/secを超えるまで強まり、加太瀬戸や中ノ瀬戸通過は危険と感じ、由良瀬戸を通過することにした。もともとまぎって走っていたところへ加え大廻りとなり、海峡通過が大幅に遅れ、恐れていた北流に当ってしまう。夜9時前後かと記憶するが、エンジンを使用するも船速が0.7や0.9ノットとGPS(対地速度)に表示される。この後の潮岬通過時なども含め、今回の廻航ほど潮流の影響を感じたことはない。

 その後、またこれも前回同様に紀伊水道で完全に凪に捕まりエンジンを使用。朝まずめの頃には南紀田辺も視野に入り始めたので、ガソリンを補給するためにも田辺に入ることにする。うちのうら海の駅の大島さんのところへ寄りたいとも考えたが、凪状態は続きそうなので、なるたけ航程を減らすべく前回断られた 田辺シータイガー へ09:45入港する。


6月1日 05:30 田辺シータイガー 出港  田辺沖       

 張り出している高気圧の動きが遅く今日も 完全なる凪 である。日差しが朝から肌に突き刺さる。日差しから逃げるすべがない。覚悟し、揺れ防止と日影を確保すべくメインセールを張り、エンジンをフルで使用することにする。取りあえず風が吹かなくとも潮岬を超え熊野灘に入り、那智勝浦には行けるだろうと思う。

 潮岬の手前から風が東寄りにシフトし、ジブも張れるようになる。この海域はまさに黒潮の海で、マリアナからフィリピン・台湾、そして沖縄を通過し、この海域に至が、まさにここは南洋そのものである。いつもそうだが私自身こころ踊る思いがある。

 潮岬だが、近づくと波頭が岬の先端から沖に延びており、陸寄りに近づきすぎて浅瀬かと一瞬勘違いしたが、黒潮の影響のものであり、由良瀬戸通過と相反して、船速が対地速度で9ノットを超える。紀伊大島などまるで新幹線にでも乗っているような感じで通過してしまった。

 熊野灘に入り、やはり午後から海陸風が強まり、一時エンジン併用
セールを上げる事ができたが、焼け石に水である。その後の長丁場を考えれば 那智勝浦 でガソリン補給は必須である。那智勝浦も海の駅であり、受け入れ体制は整っているはずである。

 連絡を入れると、担当者の方の携帯へ繋がった。その日は海の駅は休日で、転送にしていた様です。ちょうど担当者の方も釣りに出ているとのことで、本船を視認できるとのことでした。結果、入港OKの確認も出来、ガソリンの手配までして頂いた。なんと有り難いことか、お名前はお聞きしませんでしたが、その時のご対応に感謝申し上げます。15:00入港。

 船の片付けとガソリンの補給が終わり、この港から目と鼻の先の紀伊本線の那智駅に隣接する温泉 丹敷の湯 に浸かった後、タクシーで紀伊勝浦港へ向い、食事を取る。この港も三浦三崎と同様にマグロの町であり、観光化している。実際入った店には台湾人かと思われるカップルと欧米系の人もいて繁盛はしていたが、期待したほどではなく、マグロの内臓の生姜煮・血合いのフライ・マグロの漬け丼をいただくが、漬け丼は漬かっておらず、"味が薄かったら醤油をかけて" とのこと。要するに御飯の上に生のめばちマグロを乗せたままといったところである。まあ、量が多かったので良しとしておこう。

 港には19トン型の 延縄漁船 が岸壁を占めていた。乗組員は6人ほどで、船頭・船長・機関長以外はインドネシアの若者らしい。漁場は小笠原南方で、1航海1ヶ月以内程度とのことだが、私にもその過酷さが想像できる。しかしながら金銭の他にも堪え忍んだ者だけが得られる喜びというものがあろう。頑張ってね !!

 以前、井上靖の小説で補陀落渡海記という短編を読んだことがある。内容は、中世の補陀落信仰を題材にしており、その信仰の中心になった寺が那智駅の北側に補陀落山寺として現存する。その住職金光坊が61才になった年に現世の生を棄て、観音浄土に生まれ変わろうという物語で、ここ浜ノ宮あたりの海岸から小舟に乗り組み遙か南方にあるという補陀落浄土を目指し、船出するという物語である。その内容は強く記憶に残っている。いずれ私自身も浄土には行く予定だが、今暫くは小型ヨットパンタレイで補陀落渡海を実践することが無いようにと願いたい。


6月2日 05:30 那智勝浦 出港         2日天気図 4日天気図

 さあ、これからが本番である。依然として高気圧に包まれ凪状態で、風は期待出来ない。当然として燃料には限りがあり、予備タンクを含め約32㍑のガソリンでは、エンジンを22~3時間程度しか稼働できない。ガソリン補給を考えれば内陸沿いに沿岸を舐めるようなコースを引くべきかと考えたが、思案のあげく、風を期待し、直行のコースで向うことにする。但し、携帯が繋がる様に前回の沖だしコースよりも沿岸沿いを進む事にする。

 結局、朝凪・午前中の北や東寄りの風・午後の南寄りの風・夕凪・夜間 の方向が定まらない微風などを捉え、熊野灘・遠州灘を超え、なんとか伊豆大島付近まで50時間以上かけてたどり着くが、4日の昼時点で残りのガソリンでは、三浦三崎までたどり着けない事が明らかになる。入港時や万が一を考えればこれ以上エンジンを使用できないと考え、一晩くらい漂ってもと思い、エンジンをストップすることにする。但し、午後からの南寄りの海陸風を期待してもいたが。その後、思いが通じたようで徐々に南寄りの風が強まり、結局、その後の4時間はアビームで約6ノットほどで快走する。一気に燃料の問題は解消し、16:20三浦三崎入港。


6月5日 04:30 三浦三崎港 出港

 明らかに昨日までの気候とは違う。曇り空で、雨もぽつぽつ降り出している。1日遅れれば石廊崎か神子元島あたりで時化にあっていたと思う。海上保安庁の気象状況で確認すると神子元島は、15m/sec程度の風速であった。

 横浜ベイサイドマリーナ09:00入港
  廻航ビデオ